「富士山」が世界文化遺産に登録

 わが故郷から仰ぎ見る霊峰、「富士山」が、「富士山−信仰の対象と芸術の源泉」として世界文化遺産に登録されることが決定したそうで。
当初は「三保松原」を除外して登録となるかと思われていたところ、逆転で「三保松原」も含めた一括登録が実現したとのこと。旧清水市の出身で、子供の時分には三保の松原の裏側を自転車で走り回っていた私としては、喜びもひとしおであります。

しかし登録決定後の新聞に載った写真を見て、個人的にはとても悲しい気持ちにもなりました。その写真がこれです(↓)。

 
朝日新聞に掲載された三保松原
朝日新聞に掲載された「三保松原と富士山」の写真(2013/6/22撮影)

海岸の砂の流失(=砂浜の後退)を防ぐための離岸堤と消波ブロックによってギサギサになっている海岸線を見ると、「本当の三保の松原はこんなじゃなかったのに…。」と思いますね(´・ω・`)。

三保半島と言うのは、静岡市の中心部を流れる安倍川(「安倍川もち」が名物であります。)から流れ出る砂が堆積して形成された砂州(砂嘴)で、私が子供の頃には、航空写真などを見ると、まるで女の人が富士山に向かって手を差し伸べるような形で、綺麗な曲線の海岸線が形成されていました。
(私がかつて作った創作民話?も、その形をモチーフにしたものです。→こちら

また三保半島の砂浜に限らず、静岡県中部の駿河湾西岸の海岸線は、大井川と安倍川という二つの大きな川から流出する砂によって形成された長い砂浜の海岸線が続き、御前崎から富士市の田子の浦まで、それはそれは美しい、なだらかな曲線の砂浜の海岸が続いていたのです。

ところが高度成長期以降、川砂の採取やダムの建設などによって河川からの砂の流出が減ると、美しかった駿河湾西岸の砂浜はどこも、激しい海岸浸食に悩まされるようになりました。河川からの砂の流出が減ったことによって、砂浜に供給される砂の量が減ってしまったためです。駿河湾は日本一の深さを誇る湾で、西岸から東岸までわずか数十キロの間に、2500メートルまで沈み込む急斜面の断面を持つ「急深」の湾ですから、河川からの砂の供給が減れば海岸の砂はたちまち、水深2000メートルを超える深海にまで滑り落ちて行って失われ、二度と帰って来ません。これを何とかしようとして、駿河湾の西岸にはたくさんの消波ブロックや離岸堤などが建設されましたが、その結果が上の写真であり、またGoogleマップで見ることが出来る、現在の駿河湾西岸の海岸線だというわけです(↓)。

Googlemapの久能海岸


画像をクリツクしてGoogleマップで航空写真を拡大して見ていただくと非常に分かりやすいのですが、飛び飛びの離岸堤によって守られたギザギサの砂浜は、まるでノコギリの歯か、あるいは開いたファスナー(ジッパー)の務歯(エレメント)のように見えます。これではとても「美しい海岸線」なんて言えません(泣)。

私が子供の頃の海岸線は、まだこんなではなかったはずです。特に「東照宮」のある久能山のあたりから三保半島の先端(真崎)までのなだらかな曲線は、本当に美しいラインだったはずなのですが…。
(私の姉は私がこの写真を見せた時、「なんで?誰がこんなことをしたの?」と叫び声を上げました。かつての海岸線の記憶を持つ者にとっては、それぼとショッキングな画像だということです。)

まあ一説によると、あと10〜15年もすると、安倍川の上流に作られた砂防ダムがいっぱいになって、するとまた砂の流出が始まり、徐々に砂浜は回復するのでは?とも考えられているのだそうです。しかし出来れば私も死ぬまでにもう一度、あの美しかった海岸線が復活したところを見たかった。砂防ダムがいっぱいになるまであと10年ばかりとして、その後私が死ぬまでの間に、砂の供給は間に合うのでしょうか?
(と言うかしかし、もしそこから10年や20年で急速に元に戻るようなら、その時はその時でまた逆に別の、より大きな弊害が生まれそうですが…(^_^;;)

まあいずれにせよ、今回の世界遺産登録で、地元ではおそらく、俄かに観光活性化への期待が高まるのでしょうけれども、個人的にはそれよりも、これが契機となって、自分たちの地元に残されている「自然の価値」に対する認識が高まり、あの美しかった海岸線を取り戻すとか、そういう方向に、人々の意識が向かって欲しいものだと思います。外からの観光客の増加を狙って「観光地」としての新たな開発(=既存の環境の破壊)を進めようとするなんて本末転倒&言語道断。今回の世界遺産登録は是非、地元の人が気づかずにいた地域の「価値」を、世界の人々が掘り起こし、認めてくれたのだと考えて欲しい。

で、これは、2012/12/31のエントリーや、その後の2013/01/27のエントリー(の特に「追記」の部分)にも書いたことと共通するのですが、「世界遺産」とか「水族館」とか、そういうものの話題になるとすぐ、「それを使ってどうやって他所から人を呼び、金を儲けるか」ということばかり考えがちになります。(特に昨年秋の政権交代以来、そうした傾向が著しい。苦笑)

しかしそうではなくて、大切なことは、「それが自分たちの地域住民にっての宝になる」「自分たちの住む地域の価値を上げる」ということを、どれだけ意識するか/意識できるかなのではないでしょうか。

静岡/清水/三保であれば、「三保松原と富士山」をテーマにして、様々な芸術作品をコレクションして行くことなども考えれば良いのでは?と思います。実際、今回の世界遺産登録の過程の中でも、安藤広重の浮世絵などが話題には上がっていますが、そのように、過去の美術作品や文学作品、あるいは映画の中などにも、様々な形で「三保松原と富士山」は取り上げられています。それらを集め、市民や観光客がそれらについて学ぶことが出来るようになるとしたら、観光の役にも立つでしょうけれどもそれ以上に、地元清水に生きる人々が、自分の住む街の「価値」を再発見することになると思います。

子供たちに残すべき「財産」は、美しい自然や文化と引き換えにした預金残高などではなく、地元の文化や伝統と、それを育む豊かな自然とであって欲しいものですね。文化と伝統と自然とが残されていれば、次代を担う若者たちも、そこから再び、新しい時代にあった文化と伝統とを産み出すことが出来ます。それこそが本当の「財産」であり、「資産」です。これに対して、「お金」だけしか残っていないのでは、若者たちはそこから何を産み出せば良いのでしょうか。(マネーゲームに走るのか?爆死)

今回の「富士山」の世界遺産登録がきっかけで、そんなことを考えました。私だけでなくて静岡・清水に住む多くの人たちが、そしてまた別の地域に住む沢山の日本の人たちが、同じようなことを考えてくれたら嬉しいと思います。

そういう意味で、祝!富士山世界文化遺産登録!!

◆追記;

せっかくなので、以前撮った三保の海岸からの富士山の写真を、こちらでもご紹介します。

三保からの富士山
三保松原から僅かに北上した三保飛行場前の海岸から見た富士山
2005/01/01撮影

三保街道
通称?三保三保街道からの富士山
私はこの道から見上げる富士山の姿がいちばん好きです。
まるでこのまま、富士山の山頂まで、真っ直ぐな道が続いているように思える。
2005/01/01撮影

皆様も是非一度、わが故郷においで下さい(笑)


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